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“Deep Sea Portfolio” -2

〜ニュースに取上げられない、独自の生態系を貫く株式銘柄への集中投資〜

*本内容は株式会社日本取引所グループが開催している「日本取引所グループ ニュース分析チャレンジ」に関したブログです。

2021年4月27日

2020年ニュースで取り上げられなかった、独自の生態系を貫く上場企業とは

上場企業3,711社中、257社はニュースとして取り上げられず

日本には3,711の上場企業があります。上場には一定の基準が設けられており、それを超えて上場できた企業はいわば日本を代表する企業の中の企業といっても過言ではなく、そんな上場企業でニュースで取り上げられない企業があるのでしょうか?!実はあるのです。

株式会社日本取引所グループが開催している「日本取引所グループ ニュース分析チャレンジ」で公開されているJ-Quants APIによると、2020年の1年間に1度もニュースで取り上げられなかった企業は257社あります。

なおこのチャレンジで提供されているニュースデータは日経電子版見出しテキストデータであり、全国紙、地方紙、電子版、経済紙や業界紙といった森羅万象のニュースをデータとはしていません。ただし、日本で企業や経済に関連する情報媒体の代表といえば日本経済新聞であり、この観点で相応程度カバーしているという前提です。
これら企業がニュースにならないこととして考えられるのは、「規模が小さい」、「時流にそったニュースがない」、「B to Bなので読者がイメージしにくい」等が想定されますが、果たしてそうでしょうか。

ニュースにならないのは規模が小さいから?ニュース性がないから?

日本証券取引所グループのニュース分析チャレンジで対象となっている企業は時価総額200億円以上の企業です。この範囲において、相対的に規模が小さい企業でニュースに取り上げられているところは次の企業です:

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T&S inc.とオンコセラピー・サイエンス
もっともニュース頻度が高いのはT&S inc.の36件で、2020年7月に上場したのでこの関係のニュースが多いです。次に多いのがOnco Therapy Science, Inc.の18件です。ここは、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するペプチドワクチン研究開発着手のお知らせ」や年末恒例のノーベル医学賞関連銘柄でニュースになっています:

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フジコーポレーション
一方、同じような規模の企業でもニュースに取り上げらていないところもあります。例えばフジ・コーポレーションです。時価総額は4月15日終値で約300億円、売上は136億円と、ニュースに取り上げられているT&S inc. やOnco Therapy Science inc.よりも時価総額も売上も大きい企業です。タイヤの専売店「タイヤ&ホイール館フジ」を東北、関東中心に直営展開している会社です。直近の業績を見てみると前年同期比で売上・利益とも約20%伸びています:

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業績好調の背景には、強い寒波や大雪の影響でスタッドレスタイヤの販売が好調だったようです:


2020年年末より大雪や寒波のニュースは連日報道されており、その関連でニュースとなってもおかしくない内容です。

いずれにせよ、これら257社はニュースに取り上げられることがなかった上場企業です。これら企業の株式は果たして、ニュースによってミスリードされることなく純粋に評価され、ニュースでセンセーショナルに扱われないがゆえにボラタリティの低い安定した株価推移が見込まれる可能性があるのか、日本取引所グループが開催しているチャレンジの中で、その仮説を検証していきます。

Deep Sea(深海)に生息する、自ら光を放つ5社

日本証券取引所グループのチャレンジは次のような内容であり、上場企業の中からいくつか銘柄を選んでポートフォリオを組成します:

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現金100万円を原資として、1週間の収益(キャピタルゲイン)がより高くなるポートフォリオ(購入する銘柄等の組み合わせ)の予測に取り組んでいただきます。本コンペティションにおける収益とは、ある1週間のうち、初日(月曜日)の始値で購入し、最終日(金曜日)の終値で売却する時の収支を指します(詳細は「予測対象」を参照)。 ポートフォリオの予測に当たって、銘柄情報・株価情報・ファンダメンタル情報・日経電子版見出しテキストデータ・適時開示データ等の様々なデータを利用することができます。 本コンペティションでは、この1週間における収益の競争を、2021年5月10日(月)〜2021年6月4 日(金)の4週間(4ラウンド)の期間でそれぞれ実施し、その4ラウンド全ての総合的な収益を競っていただきます。なお、本コンペティションでは各銘柄は1株単位で購入可能とします。
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ニュースで取り上げられなかった257社を1株ずつ投資したポートフォリオでは100万円の上限を超えてしまうので、銘柄を厳選する必要があります。かつ時価総額200億円以上の企業が対象です。
今回は、非常にシンプルな「成長率」・「収益性」・「効率性」の3つの観点でニュースに取り上げられなかった257社をランキング化しました。そのランキング上位5社は次の企業です:

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この基準で選ばれたのは、2020年にニュースに取り上げられることはなかったが、その中でも高い「成長率」・「収益性」・「効率性」をもつ企業です。例えるならば、ニュースという光の当たらない深海(Deep sea)に生息する、進化し(成長率)、強さがあり(収益性)、賢い(効率性)をもつ独自の生態系を貫く生命体です。深海の特徴は日の当たらなさ、温度の低さ、圧力の高さにあり、エサが少なく太陽光の届かない深海には生物がいないと考えられていた時代もありましたが、現在は数多くの生物が確認されており、まだ見つかっていない生物も多いと考えられています。また、深海の環境の中で効率的にエサを取るために、自ら光を放つなど独自の進化を遂げています。

対局にある浅海です。浅海は日の光があたり餌が豊富にありますがその分その餌を巡って競争は熾烈です。常日頃ニュースという日の光に当たっている企業は知名度があり新商品を出した時のPR力も抜群です。一方、ニュースは常に正しい内容とは限らず、メディアの考えがバイアスとして入っており正しく日が当たらないこともあり、また常にポジティブなニュースばかりではなく有名大企業になるほどネガティブなニュースが出た時のダメージは大きくなります。

一方ニュースに取り上げられない企業はニュースに踊らされることなく、深海の生命体のように自ら光を発しながら独自の進化を遂げているのではないでしょうか。これら深海の生命体のようなニュースに取り上げられなかったものの、高い「成長率」・「収益性」・「効率性」を保つ、”Deep Sea Portfolio”ともいうべき5社のパフォーマンスを見てみます。


→ ”Deep Sea Portfolio”のパフォーマンス








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